コラム

地方自治体における女性活躍推進
矢島 洋子/三菱UFJリサーチ&コンサルティング

2025/09/12

地域社会の男女共同参画を実現する上で、地方自治体に期待される役割は、大きく分けて2つある。一つ目は、企業や社会の女性活躍を推進するべく、企業や住民に働きかけること。二つ目には、自身の組織内、つまり「地方公務員」における女性活躍を推進することである。前回のコラムで紹介した、地域社会における固定的性別役割分業意識といったジェンダーバイアスの解消は、いずれの取組みにも共通する課題である。今回のコラムでは、地方公務員における女性活躍推進課題について整理する。

1.女性活躍推進の都道府県格差

女性活躍の推進状況をはかる指標としては、これまで「管理職に占める女性割合」がよく用いられてきた。近年では、「平均賃金の男女差」も注目されており、他に「平均勤続年数の男女差」や「従業員に占める女性割合」などがあるが、これらの指標は異なる傾向を示す。例えば、企業の女性活躍度ランキングといったものを作る場合、どの指標を取るかで上位企業は大きく異なる。そうした異なる指標があるという前提で、ここでは「管理職に占める女性割合」の都道府県間格差をみてみる。下図には、2つのグラフが並んでおり、いずれも「管理職に占める女性割合」だが、1)のグラフは、「民間企業や公務員等で就業する人に占める管理職(管理的職業従事者)」の割合である。課長・部長相当の管理職だけでなく、役員も含まれる。2)のグラフは、「地方公務員における管理職」の割合である。課長相当以上の管理職が含まれるが、民間企業の役員にあたる知事や議員は含まれない。1)のグラフは、令和2年度の国勢調査から作成しており、2)のグラフは、令和6年度の内閣府調査から作成している。国勢調査が5年に一度のため、大きく時期が異なり、管理職の定義も異なるため、単純に比較はできないが、それぞれの指標における都道府県のランキングの違いや、トップと最も低い都道府県との水準の差などをみていきたい。

図1 都道府県別管理監督者に占める女性割合

都道府県別管理監督者に占める女性割合
都道府県別管理監督者に占める女性割合

出所:
1)「令和2年国勢調査」 就業状態等基本集計第7表
2)内閣府「地方公共団体における男女共同参画社会の形成又は女性に関する施策の推進状況(令和6年度)」
注:1)の「管理的職業従事者」は、会社役員、会社管理職員、管理的公務員等を示す

グラフの都道府県の並びをみると、1)の民間企業・公務員を含むデータで、最も女性の比率が高いのは徳島県で、最も低いのは長野県だ。一方、2)の公務員のみデータでは、最も女性の割合が高いのは鳥取県で、最も低いのは北海道である。トップの都道府県と最も低い都道府県との差は2)公務員の方が大きく、各都道府県の並び順は2つの統計で大きく異なっている。この違いはどこから来るのか。

「管理職比率」の水準は、業種や企業規模によって大きく異なる。そのため、一見、地域差に見えているものの多くは、その地域の企業の業種・企業規模の構成比の違いを反映している。ざっくりと言えば、未だ、女性の採用・就業者の少ない製造業や建設業の多い地域では、管理職比率も低くなりがちだ。これまで、「女性には向かない」「女性には困難」とみられてきた仕事が多く含まれるためである。一方、企業規模でみると、中小企業の方が大企業よりも平均的には管理職比率が高い。子育て等の時間制約社員が希望する「柔軟な働き方」は、中小企業の方が提供しやすく、そのため、子育て期の就業継続が叶い、管理職候補層にたどり着く女性が多かったためである。ただし、ここ10年ほどの大企業の追い上げで、企業規模による差は縮小しており、規模300~1000人くらいの中規模企業が取り残されるような傾向がみられる。もちろん、同じ業種・規模の企業・組織間では、それぞれの組織の女性活躍の取組みの違いが差につながっている。

管理職比率に代表されるような女性活躍の地域間格差については、固定的性別役割分業意識等のジェンダーバイアスの影響が指摘されがちだ。確かに影響はあるが、その影響が最も大きいのであれば、1)と2)の都道府県のランキングは、近い並びになるはずである。そうはなっていないことから、地域社会のバイアスといった風土のせいにばかりはできず、各企業・組織が業種や規模の特性にあった取組みを行うことで、管理職比率等の指標を高めていくことができると考えられる。

2.地方公務員の女性活躍推進課題

地方自治体をひとつの業種と捉えた場合、これまで「女性には困難」とみなされてきたような仕事は比較的少なく、そのため、女性の従事者(職員)比率は高いといえよう。女性割合の低い警察や消防といった職域もあるが、一方で保育・教育、保健等女性の多い職域もある。規模としては、大企業に相当すると考えられるため、両立支援やテレワーク等の柔軟な働き方の制度を導入しても、それらの制度の運用やマネジメントをいきわたらせることが困難、という大企業特性を有しているといえる。業種・規模特性の両者を総合的にみると、推進が困難な業界とはみなせないであろう。そうした視点でみたとき、2)のグラフで、管理職比率が10%未満と低い水準の都道府県が複数あることは、業種や規模の特性を差し置いても低い水準であり、組織として、女性活躍推進に積極的に取り組んでいない可能性がある。女性活躍やダイバーシティ&インクルージョン推進には、トップのリーダーシップが重要と言われるが、ランキングトップの鳥取県の平井知事は、全国知事会会長経験者でもあり、この数字は知事によるリーダーシップによるところも大きいとみられる。

女性活躍の推進は、すべての職員がWLBを図ることのできる働き方を可能とし、性別に関わりなく活躍できる環境整備を行うことが課題となる。施策としては、WLB環境実現のための長時間労働縮減とテレワーク等の柔軟な働き方の導入。また、性別に関わらず成長につながるような仕事の機会を与え、職員が育児・介護やその他のライフイベントやWLB課題に直面し、柔軟な働き方を活用した場合にも、時間あたり生産性で公正な評価を受けられ、積極的なキャリア展望を描けるようなマネジメント、育成を行う。そのために、組織のマネジメント層から若手まで、アンコンシャスバイアスや固定的性別役割分担意識に捕らわれずに部下や同僚と向き合う風土が醸成され、偏りのない配置や業務配分、評価が行われ、ハラスメントのない職場を作っていくことが必要だ。こうした取組みの必要性には、民間も公務員も無い。

ただし、公務員の課題をひとつあげるとするならば、「人事評価」を効かせる取組みの遅れだ。これには、地方自治体に人事評価が義務付けられたのが2016年であることや、公務員が雇用の安定性の高さと裏腹に年功管理的要素が根強く残っていることなども影響していると考えられる。特に、両立のための働き方の選択が可能となってきた近年では、子育てや介護期の制約のある働き方を選択した職員と周囲の同僚との公正な評価が重要なポイントになっている。

今後は、トップのリーダーシップの下、官民に共通した女性活躍の取組みを推進し、評価等における地方自治体としての課題に対応することが求められる。また、よく指摘されることだが、知事や議員等の理解のもと、職員のWLBや子育て等の制約社員の活躍の観点から、議会運営の見直し等を行うことも必要だ。議会運営の見直しは、地方議員の女性活躍にも資するものとなろう。

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矢島 洋子

三菱UFJリサーチ&コンサルティング
CDIO/主席研究員
矢島 洋子

1989年に三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)に入社。研究員として、少子化対策の視点から、WLBやD&I関連の調査研究や政策提言、企業コンサルティングに取り組む。2004年4月より3年間、内閣府男女共同参画分析官。2018年7月に執行役員就任、2025年1月より現職。